今野 晃嗣

    麻布大学獣医学部動物応用科学科講師

    村山 美穂

    京都大学野生動物研究センター教授

    学習や作業においてはまさに天才的

    このように多くの単語を学習したイヌたちの能力はすばらしいものですが、そこで学んだ動作は「よばれた物体をもってくる」という一つの動作だけであることには注意すべきです。また、こうした学習能力がほかの領域の知性とどう関連しているのかもいまだ不明です。つまり、ここで発揮されているボーダー・コリーの「賢さ」はきわめて限定的です。


    ましてや、ボーダー・コリーは「賢い」からトレーニングするのが楽だろうと考えるのはまったくのまちがいです。むしろ、ボーダー・コリーのもつ「天才」的な「賢さ」を現代の都市化された環境でいかんなく発揮させるには、彼らにとって適切な「仕事」の機会をつくってあげることが必要です。問われているのは飼い主側の「賢さ」なのです。


    公園で飼い主の訓練を受けるボーダーコリー

    写真=iStock.com/Mr Vito

    ※写真はイメージです



    牧畜犬など、イヌの性格分析をすると…

    誰とでもすぐになかよく遊べる性格も、オオカミからイヌへの進化で強められた性格です。古代犬種も社交性と好奇心が低めでしたので、やはり、こうした向社会的なイヌの性格はヨーロッパ原産犬種においてさらに磨きがかかったように思えます。これまでの性格研究の結果を広く見渡してみると、現代犬種の中でも特定の仕事や作業を任されてきた犬種がとくに社交的で遊び好きであるといえそうです。


    スウェーデンの研究チームは、作業犬種(11犬種)とそれ以外の非作業犬種(9犬種)のC-BARQ(イヌの恐怖心と攻撃性を細かく調べる質問紙調査票)のデータを比較しました。ここでの作業犬種には、ジャーマン・シェパードやロットワイラーなどの牧畜犬や護衛犬が含まれていました。


    羊を誘導するボーダーコリー

    写真=iStock.com/vyasphoto

    ※写真はイメージです



    その結果、作業犬種と非作業犬種でもっとも差が大きかったのが「ヒトとの遊びへの強い関心」で、作業犬種のスコアの方が30%ほど高い傾向がみられました。そして、遊びへの関心が強いイヌの方が訓練への反応性の得点も高いことも明らかになりました。イヌに何か特別な作業をしてもらうためには必ずヒトとのトレーニングが必要ですから、人あたりがよく遊び好きな性格は重要なはずです。


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