名越 健郎

    軍への侮辱罪で、ロシアのジョークにも自己規制

    集合住宅までミサイルやドローンで攻撃される戦争の泥沼化で、ウクライナ人がいつまで「笑い」を維持できるかは微妙だ。「親ロ」のトランプ政権登場も、ウクライナを外交的に厳しい立場に追い込んだ。


    ロシアがウクライナに侵攻した2022年は、1922年のソ連邦結成からちょうど百年後だった。プーチンは、レーニンがロシアの地にウクライナという「人工国家」を造ったと非難したが、ソ連を構成した第一の共和国が第二の共和国を攻撃することに驚愕しているのは、あの世のレーニンだろう。


    この稿では、「第一次ウクライナ戦争」といわれる2014年のロシアによるクリミア併合前後から今日のウクライナ戦争までの作品を集めた。クリミア併合の頃はロシアのジョークサイトにも多くのネタが載ったが、全面戦争後は軍への侮辱罪が導入され、自己規制になったようだ。このため、ウクライナや欧米のサイトに掲載されている作品からも拾った。


    ロシアに逃げた犬が、ウクライナに戻った理由

    ○ロシア人とウクライナ人

    ウクライナの犬がロシアに亡命した。


    犬は、仲間に亡命の理由を説明した。


    「ウクライナは経済がひどくて、ろくなエサがなかった」


    一週間後、犬はウクライナに戻ってきた。


    「ロシアでは、自由に吠えられなかった」



    ○NATOの憂鬱

    ウクライナ侵攻前、ロシアの将軍が意識不明に陥り、一年後に回復した。


    将校が将軍にその後の戦況を説明した。


    「将軍、大統領がウクライナ侵攻を命令し、実質的にNATOとの戦いになり、これまでに戦死者と負傷者は100万人を超え、戦闘車両、軍艦や戦闘機を大量に失いました」

    「それは恐ろしい。それでNATOの損害は?」

    「NATO軍はまだ介入していません」


    名越健郎『ジョークで読み解く「ロシア近現代史」』(PHP新書)

    名越健郎『ジョークで読み解く「ロシア近現代史」』(PHP新書)




    ○プーチンの将来

    プーチン大統領が占星術師に占ってもらった。


    「三年後の今、私はどこにいるだろうか?」

    「あなたはキエフにいます。戦争は終わり、あなたの乗る車の周辺は歓声を上げる市民であふれています」

    「私も彼らに手を振っているのか」

    「それはできません。棺は密閉されています」



    ○トランプ外交の陥穽

    トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談で、ウクライナの停戦をめぐり激しい議論を交わした。


    トランプ大統領「ウラジーミル、それではロシアがクリミアと南東部四州、オデーサ、ハルキウ、ドニプロを併合し、われわれがアラスカをロシアに返還すれば、停戦に応じるということだな」


    プーチン大統領「私の方は既に譲歩した。君は何をくれるんだ、ドナルド」

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